青空コメントアウト

WEBのこと、デザインのこと、ご飯のこと、趣味のこと。青空の向こうの誰かに届きますように。

正気と狂気の境界線 - 『遮光』の感想のような何か

このエントリーをはてなブックマークに追加

f:id:cocoro27:20160726232336j:plain

暗い物語が必要だと感じるようになったのは最近のことで、それまでは明るくHAPPYな物語ばかり読んできた。あろえ(@aloerina_)のか弱い自立神経にゆるやかに効くと処方された明るい物語たちは効果てきめんで、何度も温かい気持ちにしてもらった。

暗い物語なんて誰が読むというんだ、マゾヒストめ。

反面暗い物語への風当たりは強く、こんな世間知らずで中二臭いことも言ったような言ってないような。でもそうじゃなかった。暗い物語は無くしてはいけない価値あるものだったし、心の免疫力の低いあろえのような人間にこそ、必要なものだった。

せいぜい四半世紀程度、殊更豊かでも貧しくもない生活や知識や経験を積んだだけのあろえには何も知り得ないのだ。あえて言うなら知っていることは自分のことだけ。人がどんなことを経験してどんなことを感じるかなんて想像する余地もないほどに無知だったのだ。培ってきた学力や読解力や想像力をチラつかせて傲慢になる日もそこそこあったけれど、笑ってくれるなら笑ってほしい。黒歴史として記録が刻まれるのはつらいので、黒ギャグとして笑い流してほしい。切実に。

つまり、そのくらい、人の気持ちを想像するにはいろいろ足りなかったのだ。1ジンバブエドルくらいいろいろと足りなかったのだ。

そういうわけで、今は暗い物語、リアルな物語、つらい物語をなるべく読むようにしている。少しでも自分の知らない気持ちを知ることで、いつか人に優しくなれたらいいと思いながら。
ちなみに読書家ぶっているけれど読んだ本はものすごく少ないので読書の素人です。


そしてここからは先日読んだ暗い物語、中村文則の『遮光』の話。

遮光 (新潮文庫)

遮光 (新潮文庫)

正気と狂気の境界線をふらふらしながら、でもどうしても向こう側には染まりきれない虚言癖の青年。彼の中身が抜け落ちたような生活と吐き気のする愛に振り回されながら、何とか読みきった。暗い物語はいつもそう、読んでいるうちに苦しくなるのだけれど、蝕まれているような侵されているような感覚になりながら読むのが妙に癖になる。げ、これ文章にするとだいぶ気色悪い。

話が逸れた。

とにかく、変な癖がついたあろえ以上に気持ち悪い青年の物語だったのだけれど、意外にも読み終えたときは拒絶や軽蔑は感じなかった。

「例の瓶」というのは、青年がいつも肌身離さず持ち歩いていた瓶のことで、この瓶だけ着目するとこの上なく気持ち悪い瓶なのだけれど、形見にすがる、思い出にすがる、ということは誰でもあると思うと…彼を突き放す気持ちにはなれなかった。
そして自分に嘘をつく、自分を演じる、ということもきっと多くの人が経験のあることで、演じていることで自分の生身をさらけ出さず傷つかずに済んでいるという経験をしているのもあろえだけじゃないと思う。青年はもしかしたらすごく普通の人なのかもしれない。


あの物語を読んで感じたことが「手をとりあって良い世界にしましょう」なんて小学生の今月の目標みたいなレベルなんだけれど、どうなってるのあろえの脳みそ。読み終わって思考ぐっちゃぐっちゃだったにしても、さ。もう少しあるでしょうよ。と思って今思い返してみたものの、やっぱり同じ結論に至る。

どうしても救えないようなことに、出会いたくない。

美味しいものを食べても「美味しい!」しか感想の言えないあろえの脳みそにはこれが限界なのかもしれないので、これ以上は目を瞑っていただきたいのだけれど、目を瞑るとこの続きが読めないので代わりにさっさと忘れてほしい。

とにかく、一見すると狂ってしまって気持ち悪い青年なのだろうけれど、そうなってしまった原因が「仕方のないこと」だったのだから、彼が救われる未来が来てほしかった。でも来なかったのだ。
そしてそういう未来はあろえの目先にもそこら中に転がっていると思うのだ。そういう現実を少しでもいい方向へ向けられたらなあ…というのが多少の歪みと甚大な語彙不足により「どうしても救えないようなことに、出会いたくない。」となってしまったわけです。困ったねこりゃ。



最後に言い訳をすると、こういう本の感想というものは、読んだことのない人が読んでみたい!と感じるように書くのがきっと良いと思うのだけれど(個人的にそうでありたいのだけれど)、あろえは同じものを読んだ者同士であそこがよかっただのここがすごかったのだの言い合いたいタイプなので、結果的に中身知っている人にしか通じないものを書いてしまいました。

でもできればいろんな人に読んでもらって、意見を聞いてみたいので、あろえが暗い物語を読むきっかけをつくった又吉の推薦文を置き土産として締めくくります。

もし、世界に明るい物語しか存在しなかったら、僕の人生は今よりも悲惨なものになっていたでしょう。自分の暗い部分と並走してくれる何かが必要な夜があります。

TOP